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グラハン職場に関する投稿記事を掲載しています。羽田、成田空港のみならず、各基地からの投稿記事をお待ちしています。
国内外の観光需要が高まる中、空港のグランドハンドリング(グラハン)の人手不足が顕在化しています。観光庁によると、2023年10-12月の訪日外国人旅行消費額は過去最高となりました。一方国土交通省によれば、グラハンスタッフはコロナ禍前の2019年に比べ2022年は2割減少しました。航空業界の先行き不安が離職者の増加につながったことで、需要が回復しても新規就航や増便にも影響を及ぼしています。(前号の記事参照)
会社も取り組みを始めています。新千歳空港では学生向けに「空港の仕事紹介」のイベントを開催、人材確保に動き出しましたが課題も多い。北海道には韓国からの観光客が殺到していますが、受け入れる北海道側の体制が整わず増便が進まない可能性がある、と報じられています。グラハンの不足で「飛べる」「飛べない」という選択を迫られるのは過去に経験がないそうです。
地上スタッフは航空会社ごとに資格を取得する必要があり、働き手を確保するうえでのハードルとなっていましたが、昨年11月には、ANAとJALがグラハンの資格を共通化することを発表しています。今後、空港によっては両社の業務に携われるスタッフが増えることが期待されます。
ANAASでは、始業時刻後10分と終業時刻前10分の計20分は、着替え時間、作業準備、後かたずけの時間として取り扱う(みなし労働)こと、また年間休日数を現行より6日増加すると発表しました。ここでも確実な人員補充が求められるところです。今でも有給休暇の取得が困難な職場ですからなおさらです。
グラハンスタッフを増やすために求められているのは、待遇の改善です。早急に全国平均まで賃金を引き上げ魅力ある職場をアピールしていく必要があります。
航空・旅行アナリストの鳥海高太郎さんは、人材を確保するポイントについて次の2点をあげています。
①賃金を上げるなど労働条件の改善。
【参考】平均年収(2022年) グランドハンドリング : 約357万円 保安検査 : 約374万円 *全国平均は458万円(2022年)
②正社員を増やして雇用の安定をはかる。コロナで不安定なイメージを持たれてしまっているので、それを払拭しなければならない。
ANAの新経営ビジョンでは「ワクワクで満たされる世界を」の実現に向けて「社員が働いて幸せと思える会社」を作ることが不可欠だといっています。グラハン業界においても「働く魅力の向上」を実現させましょう。
(2024年1月)
国土交通省航空局(JCAB)は、10月5日に開かれた有識者会議「持続的な発展に向けた空港業務のあり方検討会」で、航空機運航のグランドハンドリング(地上支援業務)従事者の採用状況や離職率の調査結果を公表しました。
調査結果は、全国の主要61事業者を対象に調査したものです。グラハン従業員数は一時期コロナ前比で1-2割減少していましたが、足元では回復の途上にあるとしながらも、回復のペースについては都市部よりも地方の方が回復の度合いが大きいとしています。
カウンターや搭乗口でのグランドスタッフによる案内など「旅客ハンドリング」は、2019年3月時点で約1万4100人でしたが、今年4月時点で19%減の約1万1500人、9月時点では14%減の約1万2100人に回復しました。航空機の誘導や貨物の搭降載など「ランプハンドリング」は、2019年3月時点で約1万2200人でしたが、今年4月時点では10%減の約1万1000人、9月時点では5%減の約1万1600人となりました。
回復のペースは、都市部(羽田・成田・関西・中部)と地方部(都市部以外)の空港で比べると、地方部の方が回復度合いが大きく、都市部は旅客がコロナ前の84%にあたる約7900人、ランプが92%の約6700人であるのに対し、地方部は旅客が92%にあたる約4200人、ランプが97%の約4900人となり、両職種とも9割を超えています。
国交省の資料から抜粋した下図を参照してください。
対象期間の4-8月は採用数約3600人に対し、離職者数はその半数近い約1700人でした。カウンター業務など「旅客ハンドリング」と、航空機誘導など「ランプハンドリング」の2職種が対象ですが、各社の採用活動で従事者数は増えているものの、多忙などを理由に一定数の退職者が生じている、としています。
4-8月期の採用と離職の状況は、都市部では旅客が採用1575人に対して離職888人で2:1、ランプが採用892人に対し離職331人で3:1となりました。地方部では旅客が採用664人に対して離職307人で2:1、ランプが採用488人に対し離職234人でした。
空港業務の持続的発展に向けて取り組むべき事項として、多岐にわたる事項を挙げていますが、短期的には
・賃上げを含む処遇改善に不可欠な受託料の引き上げ
・人材確保にマイナスに働く受託契約の内容の適正化
・職員負担の集中を回避するための正確な現状把握
・適切な業務量調整による高負荷の抑制
等があります。さあ実行あるのみ !!
報告の全文はこのホームページのトップページから航空情報をクリックして読むこともできます。
(2023年10月)
国交省の「持続的な発展に向けた空港業務のあり方検討会」の中間答申を受け、8月25日に「空港グランドハンドリング協会」が設立されました。その柱は、
1. 業界の共通課題の解決に向けた事業
2. 会員企業の事業基盤強化のための事業
3. 働く人にとって魅力ある業界づくりのための事業
です。
正会員46社に特別会員4社の計50社でスタート。正会員の従業員数は3万1000人にのぼります。しかしこの数字に二次下請け(三次下請け)は含まれていません。国内のグラハン事業社は約400社ともいわれます。地方基地を含め如何に多くの人たちが運航を支え働いていることか。グラハン協会にはこの400社の代表として働く人たちのためになる業界づくりに取り組んで欲しいと思います。
そもそもグランドハンドリング業務は空港のあるところに必須の業務です。それは空港において航空機運航の地上支援を行う仕事の総称を指します。主な業務として
1, 航空機への手荷物や貨物などの搭降載や機内清掃を行うランプ業務
2. お客様の搭乗などをサポートする旅客業務
3. 保安検査業務
です。
コロナ禍で離職が止まらず、メイン基地のみならず地方でも深刻な人手不足になっています。政府は訪日外国人の目標アップを掲げていますが、旅客が増加するなかでグラハンの人手不足がさらに顕在化しています。
「外航との受委託関係は、自社が受託する代わりに、自社が外地に就航した際には他社に委託するという、持ちつ持たれつの関係にあるが、今は外国航空会社の受託を受けきれない、増便への制約が発生している」と、ANAは述べています。
グランドハンドリング協会は「担い手を安定的に確保、働くものが誇りを持てて働き続けられる就労環境を創る」と言います。そのためにはなぜこのような事態に陥ったのかの総括も求められます。グランドハンドリング業務をコストの対象とみなし、コスト切下げに注力、腐心してきたことのツケが回ってきたことの結果ではないのか。持続的発展は働く者も望むところです。全国的規模での受託料の引き上げ、最低賃金の引上げなしには解決しないのではないでしょうか。
(2023年10月)
ANAの全国グランドハンドリング職場で係員の人身事象(事故)が多発しており、7月にオペレーションサポートセンターから注意喚起文書出されています。今年度では4月に4件、5月に5件、6月に4件、7月に2件発生しています。(7月7日付け文書)
7月10日のことマーシャリング・リフトカー(MCL)の訓練中に、バケットを下降させるシャットオフバルブを確認するために、上半身を前のめりの体勢にしたことにより、バケットが自重で下降する可動域に入ったことでヘルメットが挟まり受傷した一件は、眉を縫合したものの幸運にも重大事故は免れました。
事故に初歩的とか重大とかの区分けをしたところで意味を成しません。どうして事故が減らないのか分析と対策が取られているのかが問題になります。会社の発行する周知報告書には事象報告とともに注意喚起文書が添付されています。その内容は、
作業安全の基本は「自分の安全は自分自身で守る」「他の作業者にけがをさせない」という不変的なものである。このことを作業者一人ひとり が自律、自覚し、常に意識することが不可欠である。作業安全を全うするためには、安全のための基本ルールを、日常作業の中に習慣として取 り込むことが求められる。
毎回こうした「注意喚起文書」を出して徹底しているのだから、事故が減らないのは作業者に問題があると言いたいのでしょうか。その後も事故が減らないため、8月末に再度「作業者の安全確保の徹底について」の文書が発行されました。それによると、約4ヶ月で3件の人身事故(*1)、7月には人身傷害(*2)が7件発生しているというものです。注意喚起などが確実に履行されているか、管理、監督者層の職場巡視で確認するということです。
なんですかこれは。今求められているのは多面的の分析と検証です。その項目は、賃金・休暇などの処遇、勤務(形態・時間)、休憩の取り方、人員配置、器材、訓練、作業環境などではないでしょうか。
*1人身事故の定義 : 死亡、重体(命に関わる危険な状態)、後遺障害を伴う事象、または当該事象により48時間以上の入院が必要となった事象。
*2 人身傷害の定義 : 骨折(ヒビも含む)・縫合を伴う裂傷・重度の火傷(Ⅲ度熱傷)を負った場合、または48時間未満の入院が必要となった場合。
(2023年9月)
グランドハンドリング連絡会の安全健康アンケートを基に、航空局と面談が行われましたので報告します。
アンケートの安全面では、「安全が低下した」が前回比1.3倍となり、過去5年間で最高となったこと。また、8割強が「人員が不足している」と答えている。コロナ前に比べ国際線が6~7割の状況で深刻な人員不足に直面していることを報告。
健康面では、「自覚症状あり」「不安を感じる」を合わせ約6割が健康不安を訴えている。睡眠時間も不足傾向にあり、決められた休憩時間の取得も悪化傾向を示したこと。この間のコロナストレスに加え復便に伴う人員不足など、複合的なストレスが健康面に影響を与えているのではないか。これから夏休みシーズンや本格的な国際線の回復を迎えるが、現状の受け入れ態勢は十分とは言えない。今春闘では一定の賃上げが行われたが「不安定な業界」を払拭するには継続した労働条件の引き上げが求められる。人員・器材の準備を整え、必要なトレーニングを怠ることなく回復に備える必要がある、と訴えました。
ANAASからはこの間の退職者数の実態、パートナー会社も含めた人員不足の実態を示し、7月19日から第二ターミナルの国際化が始まるが、国際線は2つに分かれた作業になるので、やりくりに不安があること等を訴えました。
航空局の「空港業務の持続的な発展に向けた中間とりまとめ」公表について、グラハン連からは、賃上げを含む処遇改善に不可欠な「受託料の引き上げ」「受託契約の内容の適正化」(キャンセル料の設定等)は、従来にない踏み込んだ提案と受け止めたこと。体力のない地方のグラハン会社にとって受託料引き上げは重要だが、実効性をどう担保するのか。また、2月の検討会資料の現状と課題の中に、グラハンの平均年収が357万円と書かれていた。24時間の交代制勤務でのこの賃金水準について、局としての認識を伺いたいと発言。
航空局からは、短期、中期、長期の取り組み内容を明記しているが、短期については秋にフォローアップしていく。検討会は引き続き行われるので、最終的なとりまとめは何らかの形になるであろうとの発言がありました。
また「検討会メンバーには、業界関係者としてグランドハンドリング連絡会からANA・JAL・コウノイケ・スイスポートジャパンの4社が幹事として参加し、中間とりまとめがまとめられた。JAL・ANAは受託料を引き上げると話しており、反対意見はなくまとめられたもの。キャンセル料については、実現に向けて取り組んでいこうということ。平均年収が他産業に比べ低位にあることは確かです」との回答。
グラハン連からは、「質の高いグランドハンドリングを維持するためには、ふさわしい労働条件が必要です。監督官庁として、賃金をはじめとした労働環境にも目配りした行政をお願いしたい」と重ねて申し入れしました。
(2023年7月)
航空連グランドハンドリング労組連絡会は4月に「2023グランドハンドリング職場の安全・健康アンケート」調査を行いました。
結果をお知らせします。
■あなたの職場の安全は向上したと思いますか
安全が向上した 22.9%(24%)
安全が低下した 44.6%(33.3%)
わからない 32.5%(42.7%)
「安全が低下した」の回答が増えています。
■2022年度あなたの職場で事故・トラブルが発生しましたか
発生していない 32.1%(36.6%)
発生した事故・トラブルの事例
車両事故(43.6%)、人身事故(18.6%)、積み残し(13.3%)、コンテナ落下(12.2%)、
施設損傷事故(11.2%)、航空機損傷事故(4.4%)
航空機損傷事故は昨年度の14.4%から減少しました。
再発防止策は有効な対策が取られていますか
有効だと思う 32.2%(36.9%)
思わない 27.9%(27.5%)
わからない 39.9%(35.6%)
■人員が適正に配置されているか
配置されている 8.9%(20.7%)
不足している 82.9%(63.6%)
圧倒的多数が不足していると答えています。
■あなたの健康状態は
良好 40%(50.4%)
自覚症状あり 24.9%(21.9%)
不安を感じる 35%(27.7%)
自覚症状ありと不安を感じるを合わせると、前回より10ポイント増加しました。
自覚症状と不安を感じる方に症状を聞いたところ、多い順に
疲れが取れない 59.9%
腰痛 56.8%
ストレスを常に感じる 53%
肩・首がこる 41%
目が疲れる 31.9%
眠れない 23%
症状の原因を聞いたところ、多い順に
仕事 57%
人員不足 56.4%
年齢 42.7%
労働時間が長い 35.8%
勤務が複雑 28.7%
休憩が取れない 27.1%
■ストレスチェックを受けたことがありますか
受けている 84.4%
受けていない 3.8%
受けた人に結果の説明を受けたかを聞いたところ
説明を受けた 32.4%
受けていない 51.3%
ストレスチェックを受けても半数が説明を受けていません。
■平均睡眠時間は
5時間未満 23.2%(17.2%)
6時間 45%(60.1%)
7時間 22.4%(25.1%)
8時間以上 9.5%(7.7%)
平均睡眠時間6時間以下が7割近くにのぼります。
コロナ禍からの回復が進む中、空港側の受け入れ態勢が後手になって整わない中、アンケートからは職場の安全、人員不足など悪化傾向が数字で
裏付けされました。グランドハンドリングの人員不足対策は、国交省でも有識者による検討会が設置され対策が議論されていますが、対策が急務
であることが示されています。
(2023年6月)
ANAAS(ANA エアポートサービス)では2020~2022年の3年間で1203名が退職しました。
コロナ後の便数回復に合わせ新規採用、出向者帰任、空港間・グループ会社間での支援対応で拡大する業務をこなしてきましたが、未だ人員不足の解消には程遠い状況です。グループ会社を含め離職に歯止めがかかりません。なぜ辞めていくのかをきっちりと分析して対策を取る気があるのでしょうか。
最近ではAIRDO(エア・ドゥ)とSFJ(スターフライヤー)の全ての業務をMSS(明和スカイサポート)に移管しました。それでも職場では有給休暇も満足に取得できない状況が続き、日々の欠員を管理職が穴埋めして対応していますが、ここかしこで遅延が発生しています。
今年の正月のことです。スターアライアンスのUAL(ユナイテッド航空)から受託していた手荷物のトランスファーで、羽田から乗り継ぎのお客さまの積み残しが発生。UALの怒りを買ったことから3月15日で契約を打ち切られ、JGS(JAL グランドサービス)に移管されてしまいました。
会社は航空局と定期的に意見交換していると言っています。そこでは退職者増の中で労働条件、職場環境改善等についての話題になるそうです。あとは会社の決意を見せて欲しいものです。
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